適応障害とは
新しい環境に馴染むことができず、そのことをきっかけに『こころ』と『からだ』に多彩な症状がみられ、やがて日常生活にも支障をきたすようになる状態を適応障害と言います。
この疾患は原因が特定されていることが多く、その大半は生活環境の変化です。例えば転居、転校、転勤、昇進、部署の異動などで、環境が変わるといったことが引き金となって起きると言われています。
なお適応障害は、ストレスに対する正常なストレス反応といえるわけですが、健康な方が受けるストレス反応との違いは、その重症度になります。また発症するまでの期間につきましては、新しい環境になった、もしくはそこで強いストレスのかかる出来事が起きてから1ヵ月以内にみられるようになります。
発症後の主な症状は、抑うつ気分、不安、心配などで、その他にも問題行動(遅刻、欠勤、早退、暴飲暴食など)や身体症状(不眠、食欲不振、全身倦怠感、疲れやすいなど)が起きるようになります。
これらの症状は、うつの症状にもよく似ているわけですが、ストレスの原因や出来事がはっきりしていること、その環境から離れれば症状が軽くなったり、なくなったりすることがうつ病との違いです。そのため原因を取り除くことができれば症状はだんだん改善していくようになります。ただし、その原因となる環境から離れることが困難という場合は、症状を慢性化させてしまい、やがてうつ病となる可能性もあるため注意が必要となります。
治療について
まず、環境調整を行うことが何よりも大切です。原因とされているストレスを軽減するために環境を調整し、適応しやすい状態を整えていけば、徐々に症状が和らぐようになります。例えば、会社員の患者様であれば、職場環境を調整するため、患者様と相談しながら上司や人事部、産業医と連携し、会社側にも働きかけていく場合もあります。
なお環境を調整することが難しいのであれば、ストレスのある環境から一旦離れ、休息を充分にとれるようにすることで症状を軽くすること、認知行動療法によって自らの考え方や認識、行動を変えていくことで精神面を整えることが必要になります。また医師が必要と判断すれば薬物療法を使用しますが、これは適応障害を完治させるのではなく、不安や不眠などの症状が出ている患者様に対症療法として、睡眠導入剤や抗不安薬を用いるというものです。